一度は耳にしたことがある『アスペルガー症候群』とは4000人に1人が発症するといわれている珍しくない発達障害のことです。
どういう障害なのか、特徴があるのかご存知でしょうか。
直接的な死因にはならない障害ですが、社会で生きづらいと感じてしまうのはなぜなのか。
先天性疾患のダウン症のように、顔・外見の特徴があるのではないか。
自分はもしかして発達障害なのかも…?
そういった疑問が出てくる方も多く、大人になり社会に出てから気づく『大人の発達障害』の一つでもあります。
知的な遅れがないので、いまいち障害として認知されないこともあり、周囲の理解を得づらい側面もあります。
今回は、障害をもっていても生きづらさを感じない世の中をつくっていけるように、皆様に障害への理解を深めていただけたらとまとめました。
外見の特徴の紹介だけでなく、混同されやすい『ADHD』との違いや、障害の特性を生かして仕事をしている芸能人の紹介をしていきたいと思います。
そもそもアスペルガーとは?
アスペルガー症候群は発達障害のひとつです。
どのような発達障害なのかというと、コミュニケーション能力や社会性、想像力における障害により、対人関係が築きにくいという特徴があります。
言語障害や知的障害の症状はないので、周りからは「変わった人」と思われ、実はアスペルガー症候群であったというパターンが多くあります。
この特徴を大きく3つの症状として挙げると以下のようになります。
- コミュニケーションの問題
- 対人関係の問題
- 限定された物事へのこだわり・興味
健常な人は「会話をする」という動作の中で、相手の表情を見たり、間を読んだりと「会話」だけではない様々な方法でコミュニケーションを取っています。
しかし、これら3つの症状=障害があるために、「空気が読めない」とか「相手の言葉の真意が理解できない」などといった状況が生まれるのです。
こちらでもアスペルガーに関する情報をまとめています。
軽度アスペルガーの特徴は?症状やチェック方法、仕事や恋愛などへの影響など
3つの症状を詳しく解説!ADHDとはどこが違う?
それでは、前述した3つの症状について、もう少し深堀していきましょう。
コミュニケーションの障害
言語障害や知的障害はないため、表面上は問題なく会話できます。
しかし、会話の裏側や“間”を読むことが苦手です。
明確な言葉がないと、言葉をそのままの意味で鵜呑みにしてしまう傾向があるため、人の言葉を勘違いしやすく、傷つきやすい面があるのです。
視線が合いにくいという特徴もあって、会話のニュアンスが捉えづらいということもありますね。
仮に、アスペルガー症候群の方が会話中に、意図的に視線を合わせるようにすると、視線を合わせることに集中しすぎて会話ができなくなります。
集中するあまり、相手の言葉も聞こえないほどで、自分も何を話すべきかがわからなくなってしまうので、結果的に会話の意図を汲むということができなくなるのです。
対人関係の障害
コミュニケーション能力の障害と被るところがありますが、場の空気を読めないという症状があります。
人の表情から相手の気持ちを察したり、気持ちに寄り添う言動が苦手な傾向にあります。
そのため、社会的なルールやその場の雰囲気を無視した言動になりがちで、対人関係を上手に築くことが困難となります。
また、人の目を見るのが苦手な為に、顔を覚えられないということもあり、対人関係に影響する場合があります。
限定された物事へのこだわり・興味
この症状は、プラスに生かせそうな障害ととらえやすいかと思います。
アスペルガー症候群の方は、いったん興味を持つと過剰といえるほど熱中します。
法則性や規則性のあるものを好み、異常なほどのこだわりを見せることがあります。
そして、法則や規則が崩れることを極端に嫌う傾向があります。
一方で、興味のない物にはかたくなに手を出しませんが、こういった特性を、勉強や仕事に生かしている方も多くいます。
以上の3つが、主な症状で、よく混同される『ADHD(注意欠陥多動性障害)』とは大きく異なります。
『ADHD』の3つの症状は以下の通りです。
不注意
注意力を持続することができません。何かに長時間集中することが苦手で、忘れ物も多いです。
多動性
じっとしていることができず、いつもそわそわと体を動かしていないと落ち着きません。じっと座っていることや黙っていることが苦手です。
衝動性
何かを思いついたら考えずに行動に移してしまう。順番を守れなかったり、怒ると乱暴になって手を出してしまったりします。
突発的な動きが目立つのはADHDで、軽度であれば『変な人』と、アスペルガー症候群と一緒のようにみられがちです。
そう、『変な人』でくくられるほど、発達障害とはグレーゾーンが幅広くあり、一概に発達障害と決めつけ、偏見を持つべきではありません。
ADHDとアスペルガー症候群は障害の症状は違えど、生かすも殺すも周囲の理解があってこそなのです。
目つきが怖いともいわれるけども、外見の特徴とは?
さて、アスペルガー症候群は目に特徴があるという話を聞いたことがあるでしょうか。
先天性疾患であるダウン症には、目に特徴がありますが、結論から言うと、アスペルガー症候群にはそういった外見の形状的な特徴はありません。
特徴があるとされるのは「視線」や「目線」などのしぐさの中の一つなのです。
先ほど、コミュニケーション能力の障害などの特徴のところで、視線を合わせるのが苦手という事をお話ししましたが、会話の相手のの顔の斜め上や後方を見ていることが多いそうです。
また、会話中、会話に集中しており、視線を動かすところまで意識が回らず、ほとんど視線が動きません。
そういった視線、目線の特徴がありますが、他にもしぐさにおける特徴と言われることがあります。
アスペルガー症候群の中で更に細かいタイプがありますが、共通点として、以下の外見が多く見られるそうです。
- 顔立ちの整った美男美女が多い、もしくは童顔
- 目力が強いor目が死んでいる
- 心理的なこだわりから、肉体的に姿勢崩れを起こしている
- 服装は他人を気遣う「ファッション」ではなく個性重視
これだけ見ると、よくいるのでは…と思うほど、ありきたりな外見の特徴ですよね。
そうなのです、話していくとやや違和感があるくらいの方を含めれば、アスペルガー症候群はとても身近な発達障害で、4000人に一人の割合よりもいると言われているのです。
アスペルガーだと損?そんなことはない強みとは!
先に述べたとおり、アスペルガー症候群の症状には強みと弱みがあります。
たしかに、“空気を読む”ことが苦手という症状は、多くの仕事では弱みになるでしょう。
しかし、こだわりをもって自分を貫き、はっきりとした言葉でのやり取りで明快に人との関係をもてる、というような特性を生かせると、それは強みとなるのです。
そうした、自分の障害を“障害”とせずに、自分の個性として強みにして、なおかつアスペルガー症候群とカミングアウトしている有名人をご紹介しますね。
スーザン・ボイル
世界的な歌手。彼女はアスペルガー症候群だと診断されています。
以前から何か人と違うと感じていた彼女は、アスペルガーだと診断されたとき、理由が分かってホッとしたそうです。
市川拓司
(映画化もされた小説「いま、会いにゆきます」で有名な小説家)
症状の一つである、ずば抜けた集中力(過集中)をアドバンテージとして感じているそうです。ふと、過去の記憶が鮮明に蘇ってきて、それを小説にしたりするのだとも。s
調べてみると、アスペルガー症候群以外のADHDやADDをカミングアウトとしている芸能人は多く見られました。
例えば、栗原類さんや勝間和代さん、武田早雲さん、世界へ目を向けるとスティーブンスピルバーグ監督など…
発達障害のカミングアウトには賛否両論ありますが、いずれにしても、自分自身で、障害を“個性”だときちんと受け入れたうえで、勇気を持たないとできない行動と言えるでしょう。
おわりに
結論としては、アスペルガー症候群には外見の特徴はない、というものでした。
そして、目つきやしぐさが怖くなってしまうのにも、会話を一生懸命にしようとする努力の証であり、それを知っていれば、怖いという印象はなくなるのではないでしょうか。
また、芸能人で検索しても、アスペルガー症候群の疑いがある方はたくさんいますが、正式にカミングアウトしている方が少ないということがわかりましたね。
近年、大人の発達障害というのが取りざたされることが多くなっています。
社会に適合しないのが、性格であると雑に片付けられていた過去と比べて、病気のせいであることや、発達障害に対して正しい知識が知られるようになってきた証拠です。
適切に接することが一般化することで、障害をもつ方が社会に適応するのではなく、障害をもつ方に社会が適応していく世の中になっていくことが期待できます。
この記事をきっかけに、アスペルガー症候群だけでなく、様々な障害の方が生きやすいように、知識をもって接することができる方が増えたら幸いです。